大阪地方裁判所平成30年9月12日判決(判例タイムズ1456号161頁)
本件は、会社側が、被用者に8つの懲戒事由があることを根拠に、原告の弁明を斟酌して普通解雇の処分を加えたところ、被用者が、解雇無効に基づく社員の地位確認と、解雇無効に基づく損害賠償を請求した事案である。
裁判所は、まず各解雇事由につき、「非違行為と認められるものであっても、それぞれ個別にみる限りにおいて、本件解雇の客観的合理的理由ということはできない」とした。次に、一部の事由については「既に懲戒処分を受けている」ことや「業務への影響が限定的である」ことを述べたうえで、全解雇事由につき、「過去の経緯を踏まえた上それを全体としてみたとしても、本件解雇の客観的合理的理由といえるほどの事由があったとまで認めることはできない」とした。
他方、裁判所は、損害賠償請求に関しては、被用者に「非難されてもやむを得ないといえる行為」や「非違行為とまではいえないまでも穏当とはいえない行為」、被用者の「業務遂行能力に疑念を抱かせる行為」が存在して、会社の「業務に一定の支障が生じたこと」を認定した。その上で、会社は被用者に対して「全体的には相当の配慮をもって対応してきたといえる」のに対し、被用者は「個々の事象を被害的に受け止めたり過敏な反応を示したりする傾向」があり、「それが本件解雇のような様々なトラブルの発端となった」と判断して、「本件解雇は、それ自体としては無効であるが、不法行為を基礎付けるほどの違法性があったとまでは認められない」との理由で、請求を退けた。