札幌地方裁判所平成30年12月14日判決(判例タイムズ1462号147頁)
本件は、複数の労働組合が存在する会社が、経営再建のために新賃金体系に基づく協定を他の組合と結んだが、協定を拒んだ組合の者に対しては、旧賃金体系に基づく取り扱いを行ったため、拒んだ組合員所属の組合が、旧賃金体系に基づく勤務上の制限が、労働組合法7条所定の不当労働行為に該当すると主張した事案である。
裁判所は、以下のように述べて、その主張を全て退けた。
まず、労組法7条1号違反については、新賃金体系に関する各組合との交渉を当初から詳細に認定して、会社が本件組合員を含む労働者に対して、「受入れが容易でない本件各改定案を提示しながらも、経営状況に照らしそれが必要であり、やむを得ない旨を説明し続けてきたのであ」り、また、会社は「労働基準法その他の賃金規制に反することを認識しながら敢えて新賃金体系を提案し、原告をして新協定の締結を拒まざるを得ない状況を作出したとみることはでき」ないし、新協定の受け入れは困難であっても不可能ではないから、会社が「形式的に原告との交渉を行ってきたとも」いえないとした。
そうしたことから、本件では、会社が「組合員に対し、新賃金体系に同意しない原告に所属する者であることを理由として不利益な取扱いをする意図の下で本件取扱いをしたものではな」いと判断した。
次に、労組法7条3号違反については、上記1号と同様の判断を述べたうえで、会社が「本件取扱いの実施によって労働組合である原告の組合員が原告を結成又は運営することを支配し又はこれに介入した」とはいえないとした。