信託法の条文ポイント

第19条(信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割)


1 受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と固有財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。

(1)信託行為において定めた方法

(2)受託者と受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)との協議による方法

(3)分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、受託者が決する方法

2 前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、受託者又は受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。

3 受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と他の信託の信託財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。

(1)各信託の信託行為において定めた方法

(2)各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)の協議による方法

(3)各信託について、分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであると認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、各信託の受託者が決する方法

4 前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。

(ポイント解説)
 民法256条は、5年を超えない不分割特約を認める。そこで、信託において、5年を超える不分割特約が可能か。民法においても、組合の清算前の分割は禁止されている。信託行為における5年を超える不分割特約も、信託目的に照らして合理的であれば、効力を認めてよいと考えられる。

 受託者単独での分割を認める1項3号及び3項3号は、信託行為に定めがないときに受益者の承認なしに受託者が利益相反行為を行い得る場合に関する31条2項4号と同旨の規定である。ただ、31条と異なり、受託者には、受益者に対する通知義務が課されていない。