近時の重要判例


共同相続と時効取得・相続分のないことの証明書の性質

東京地方裁判所平成30年7月12日判決(判例タイムズ1471号196頁)

「数人の共同相続人の共有に属する相続財産たる不動産につきその一人による単独の自主占有が認められるためには、その一人が他に相続持分権を有する共同相続人のいることを知らないため単独で相続権を取得したと信じて当該不動産の占有を始めた場合など、その者に単独の所有権があると信ぜられるべき合理的な事由があることを要すると解するのが相当である(最高裁昭和54年4月17日判決)。」

「『相続分のないことの証明書』の記載内容や利用実態に鑑みると、事実行為に過ぎない同証明書の作成・交付によって、直ちに同証明書に表示された相続人による相続分の放棄や譲渡等の法律行為の存在が認定されるのは相当でなく、同証明書の作成・交付に至った経緯や、その際の説明、当事者の証明書に関する理解度、代償金の有無等の事情を踏まえた上で、上記法律行為があったと推認できるか否かを総合的に判断するのが相当である。」