東京地方裁判所平成26年4月9日判決(判例タイムズ1435号235頁)
「一般に、税理士法人の社員が脱退後に行った税理士法人との競業行為は、自由競争に属し自由であるから、当該競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元の税理士法人の顧客を奪取したとみられるような場合に限って、元の税理士法人に対する不法行為に当たる(元従業員の競業行為に関するし最高裁平成22年3月25日第一小法廷判決・民集64巻2号562頁参照)。次に、原告の社員である間に被告が将来の競業行為のために行う準備については、脱退する被告の営業の自由と、税理士法人である原告の利益との調和の観点から、競業行為の準備をすることは許容されるものの、原告の顧客に対し、原告との間の顧問契約等を解約して、被告が開設する事務所と顧問契約等を締結するように、違法不当な方法で働きかけることは許されないと解される。」「被告は、原告の顧客に対する退任の挨拶の際などに、被告が原告から脱退して独立開業する予定であること及びその理由等を説明したり、原告との顧問契約等を解約する段取りなどの助言を求める顧客に対し被告ないしZ3がこれに応じたりする程度のことはしているものの、被告ないしZ3が、原告の社員ないし従業員であったことに基づく顧客との人的関係等を利用することを超えて、原告の営業秘密に係る情報を用いたり、原告の信用をおとしめたりするなどの不当な方法で脱退後の営業に向けた準備活動をしたことは認めるに足りない。」