近時の重要判例


消防署におけるパワハラ

山口地方裁判所令和6年3月13日判決

「職員が地方公務員法等に違反した場合、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、抵触又は免職の処分をすることができる(地方公務員法29条1項)」

「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2第1項)」「職場におけるパワハラについては、法令上、〈1〉職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、〈2〉業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、〈3〉その雇用する労働者の就業環境が害されることと定義されている(法30条の2第1項参照。)が、事業主に対してハラスメント防止措置を講じさせること等の行政目的を達成するためにその定義を広く捉えることが志向されていると解されることからすれば、形式上〈1〉から〈3〉までに該当するか否かによってその違法性を判断するのではなく、上記〈1〉及び〈2〉との関係において、行為者の地位や権限、行為態様及びその程度、行為時の具体的な状況、当該言動の業務との関連性及び必要性、行為者と労働者の関係、労働者の受けた不利益の内容及び程度など諸事情を総合的に考慮し、職務上の権限等を逸脱するなどして、社会通念に照らして客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形又は無形の圧力を加える行為と認められ、上記〈3〉との関係において、労働者の人格的利益や良好な環境で職務に従事する利益を侵害する場合に、国賠法上、違法なパワハラに当たると評価するのが相当である。」

「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務(以下「配慮義務」という。)の内容に従ってその権限を行使すべきである(最高裁平成12年3月24日)ところ、これは、(特別)地方公共団体と地方公務員との間においても別異に解すべき理由はない(最高裁平成23年7月12日)。」