東京地方裁判所平成28年7月14日判決(判例タイムズ1437号158頁)
本件は、下請運送業者の従業員による交通事故につき、元請運送業者及び注文者の使用者責任の成否が問題となった事案である。
東京地方裁判所は、以下のとおり判示した。
注文者である被告A及び元請運送業者である被告Bが使用者責任を負うためには、被告A及びBの実質的指揮監督関係が、直接又は間接に運転手である被告Cに及んでいる場合に、不法行為がなされたといえること、すなわち、被告A及びBが、本件運送について、客観的にみて被告Cに対する指揮監督をするべき立場にあったといえることを要する。
被告A及びBが、本件運送について、客観的にみて被告Cに対する指揮監督をするべき地位にあったとはいえず、被告A及びBの実質的指揮監督関係が被告Cに及んでいたものと認めることはできないから、被告A及びBは、本件事故について、使用者責任を負わない。
(参考)
請負人の不法行為について、注文者は、注文又は指図について過失がない限り、原則として責任を負わないが(民法716条本文)、注文者と請負人との関係が、実質的には使用者と被用者との関係と同視し得るときは、注文者も使用者責任を免れないと解されており、 最判昭和41年6月10日は、使用者と被用者との関係と同視し得る関係と認め得るか否かの判断にあたっては、事実上の指揮監督を実際に行っていたかよりも、使用者としての指揮監督をなすべき義務を負うかどうかを重視する立場をとっている。