東京高等裁判所平成29年9月7日判決(判例タイムズ1444号119頁)
本件は、学校法人が設置運営する大学の准教授が、2ちゃんねる内の掲示板に同僚教員を批判し、その名誉を棄損する等の違法な投稿をしたこと(以下「本件投稿」という。)を理由に、学校法人から懲戒解雇されたところ、本件投稿は名誉棄損等に当たらないことから、本件懲戒解雇は無効であると主張して、学校法人に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である。
東京高等裁判所は、以下のとおり、判示した。
①被控訴人(投稿した准教授)は、控訴人(学校法人)から、これまで懲戒処分や注意指導を受けたことはなかったこと、②被控訴人は、控訴人から本件懲戒解雇を受け、准教授としての身分を喪失すれば、他大学への転職は著しく困難となること、③被控訴人の本件投稿によって、本件大学において学生に対する指導や運営等において、現に具体的な支障が生じていることを認めるに足りないことも、被控訴人に有利に斟酌されるべき事情に当たる。
被控訴人にとって有利・不利に働く一切の事情を総合考慮すれば、被控訴人に対して本件懲戒解雇を行うことは、重きに失して客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない(なお、控訴人は、被控訴人が、控訴人と真摯に本件に伴う今後の処遇について話合いをしようとしても、それをすることができない状況を作った旨主張するが、被控訴人が本件投稿の正当性を主張すること自体は妨げられないから、そのことをもって、被控訴人が控訴人と話し合えない状況を作り出したものと評価することはできない。)。