最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例44: セクハラ等を理由とする懲戒解雇

東京高等裁判所平成31年1月23日判決(判例タイムズ1460号91頁)

 

 本件は、女子大学の外国語学科において、学科長を兼ねたこともある教授が、女性職員や学生に対するセクハラ、アカハラ、パワハラ行為など11件の懲戒事由を大学当局に認定されたにもかかわらず、弁明の機会においても反省せず、申告した女性職員への攻撃的発言に終始したため、大学を懲戒解雇されたところ、その無効を主張した事案である。第一審は懲戒事由を1件しか認められず解雇は無効と判断したため、大学側が控訴。

 

  控訴審は、11件の懲戒事由をすべて認めたうえで、「総合判断及び私立の女子大学の経営に与える影響」として、以下の様に述べ懲戒解雇は妥当であるとした。

 

 「本件懲戒事由は、個々の行為を個別に処分すると仮定すれば、懲戒免職を選択するのは処分として重すぎるという判断に傾くものが」多い。「しかしながら、懲戒事由が多数に及び、その内容も」、教育機関である女子大学の「信用・評判を著しく低下させるもの」が「複数含まれているほか」、教授には解雇時点において「十分な反省がみられず、懲戒事由の多くに常習性がみられ」て「再発のリスクも非常に高」かった。これに加えて、教授が学科において「トップの地位にあったことから通常の職員よりも行為に対する責任が重い」こと、教授の「パワハラ体質」が学科「内部の風通しを悪く」して、「教育環境、職場環境を著しく汚染し、ハラスメント行為が包み隠されて表面化が著しく遅れたことに一役かっていると評価せざるを得ないこと」を考慮すると、「本件懲戒解雇には労働契約法15条及び16条」違反は存在しない。