福岡高等裁判所平成30年11月29日判決(判例タイムズ1463号86頁)
本件は、大学病院で臨時職員として有期労働契約を更新し続けている職員が、正規職員との賃金格差が労働契約法20条に反するとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。
第一審は請求を棄却したものの、控訴審は、以下のように述べて、請求を認めた。
まず、臨時職員と正規職員との制度の違いを認定しつつも、「1か月ないし1年の短期という条件で、しかも大学病院開院当時の人員不足を補う目的のために4年間に限り臨時職員として採用された有期契約労働者が、30年以上もの長期にわたり雇い止めもなく雇用されるという、その採用当時に予定していなかった雇用状態が生じたという事情は、当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において、労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情にあたる」と述べた。
そのうえで、本件職員に関する事情を詳細に認定し、学歴が同じ正職員が「主任に昇格する前の賃金水準すら満たさず、現在では、同じ頃採用された正規職員との基本給との間に約2倍の格差が生じている労働条件の相違は、同学歴の正規職員の主任昇格前の賃金水準を」下回る「限度において不合理であ」り、労契法20条に反するとした。