東京地方裁判所平成29年7月6日判決(判例タイムズ1464号135頁)
本件は、私立大学の年金を受給している元教職員らが、大学による規程改定により年金が減額されたことは無効と主張して、改定前の額を受給する地位の確認と差額分の支払いを求めたものである。
裁判所は、次のように述べて、いずれの請求も棄却した。
まず、大学による制度創設の経緯に照らして、「本件年金制度は、もっぱら賃金の後払いとしての性格を有する制度として成立したものということはできず、教職員に対する恩恵的給付、功労報償としての性質や、教職員間の相互扶助としての性質を有する制度であると評価することができる」とした。
次に、「本件年金制度の下における原告ら受給者と被告との間の関係は、法的に見れば、契約関係であると考えられる。しかし、当該契約関係は、それが長期間にわたり存続することが予定されているのみならず、他の加入者や受給者の存在を前提とするものであるから、集団的な性格を有しており、必然的に画一的な処理が要請されるとともに、多数の当事者を公平かつ平等に取り扱うという要請を内在して」おり、「各加入者も、このような年金制度に係る契約の特質を容認した上で本件年金制度に加入」するものとした。
そして、本件年金規定には、算定の考慮項目の「変動に応じて合理的と考えられる範囲内で年金給付額を変更することができる旨の規定」が存在することを指摘した上で、実際に考慮項目に評価を加えて、その規定にいう合理性を認定し、「世代間の公平という観点に照らし、受給者において」本件改定による「不利益措置を受忍すべき合理的な理由が存するというべき」と判断した。