東京地方裁判所平成31年4月26日判決(判例タイムズ1468号153頁)
本件は、亡夫が過重労働により死亡したとして、労基署に対し、労災保険法に基づく遺族給付及び葬祭給付の申請を行ったところ、監督署長は固定残業代の存在から時間外労働の対価を受けていたものと認定して、それを給付基礎日額から除外して算定を行ったため、原告が国を相手にして、その処分取り消しの訴えを提起した事案である。
裁判所は、以下のように述べて、処分を取り消した。
すなわち、固定残業代について、「雇用契約書も就業規則もなく、しかも、本件雇用契約締結時において、本件会社から本件固定残業代についての説明がされたことは窺われないような状況において、わずか4か月程度の給与明細書の交付と本件固定残業代の受領のみをもって、本件雇用契約の締結に当たり、本件固定残業代が時間外労働等に対する対価として支払われることについてその内容を理解した上で、応諾するに至ったことを推認」はできないとする。
そして、「具体の固定残業代について、それが雇用契約の内容となっていることが否定された以上は、使用者の雇用契約締結時に有していた意図等の如何にかかわらず、法律上通常の労働時間の賃金として組み入れざるを得ない」と判断した。