民事再生法の条文ポイント

第38条(再生債務者の地位)


1 再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第66条及び第81条第1項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。

2 再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。

3 前2項の規定は、第64条第1項の規定による処分がされた場合には、適用しない。

ポイント解説: 

 本条は、再生手続の開始が原則として再生債務者の有する業務遂行権や財産の管理処分権に影響を及ぼさないとしつつ、再生手続開始後は、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実にこれらの権利を行使し、かつ、再生手続を追行する義務を負う旨規定した。再生債務者が、手続開始後も開始前と同様に自らの利益のみを図って行動することが相当ではなく、債権者の全体の利益を適切に代表し、その利益を損なうことのないように行動する責務を負う必要があるからである。

 裁判所が法人たる再生債務者の業務および財産に関し管財人による管理を命じる処分(法64条1項)をなした場合には、再生債務者は、業務の遂行権や財産の管理処分権を失うとともに、再生手続が開始した場合に公平かつ誠実に再生手続を追行すべき公平誠実義務も負わないことになる。