1 信託財産に属する財産と固有財産に属する財産とを識別することができなくなった場合(前条に規定する場合を除く。)には、各財産の共有持分が信託財産と固有財産とに属するものとみなす。この場合において、その共有持分の割合は、その識別することができなくなった当時における各財産の価格の割合に応ずる。
2 前項の共有持分は、相等しいものと推定する。
3 前2項の規定は、ある信託の受託者が他の信託の受託者を兼ねる場合において、各信託の信託財産に属する財産を識別することができなくなったとき(前条に規定する場合を除く。)について準用する。この場合において、第1項中「信託財産と固有財産と」とあるのは、「各信託の信託財産」と読み替えるものとする。
(ポイント解説)
本条は、民法には規定のない創設的な規定と位置づけられる。民法の規律によれば、甲所有の動産と乙所有の動産について、混和がなく、いずれの所有であるか識別できなくなった場合、所有者が確定しない状態が発生し、甲乙の共有になるわけではない。
通説的見解によれば、本条は、金銭に適用があるが、信託財産である金銭と固有財産である金銭を1つの預金口座で管理している場合には、適用がない。この場合は、当初から1つの金銭債権があるだけである。